目次
工場でのコミュニケーションの取り方──自動機開発の現場から見える課題と重要性
私は自社製品を作る工場で、人手で行われている組み立て作業などを自動化する「自動機開発」の仕事をしています。工場の工程を自動化するには、現場の方々との連携が欠かせません。
しかし、製造業全体を見ると、工場と開発部門のコミュニケーションはうまくいかないことが多く、情報共有の遅れや認識のズレが大きな課題になっています。これは多くの企業で共通しており、現場と本社・開発部門の間に「情報の断絶」が起きやすいという調査結果もあります。
依頼元が自動機を理解しているかで仕事の進め方が変わる
工場で自動化できない工程が発生すると、開発部隊に依頼が飛んできます。このとき、依頼元が「自動機とは何か」を理解しているかどうかで、仕事の進め方が大きく変わります。
理解している場合:スムーズに進む
- どこが難しいのか把握している
- 自動機の仕様を自ら書ける
- 工程の制約や条件を明確に説明できる
この場合、開発側は仕様に沿って検討を進めるだけなので、非常にスムーズです。
理解していない場合:依頼が漠然とする
- 「とりあえず自動化したい」という依頼になる
- どこが難しいか理解していない
- 仕様が書けないため、開発側が一から整理する必要がある
現在はこのパターンが多く、開発側が工程分析から仕様作成までを担うケースが増えています。
仕様が書けない場合に必要なコミュニケーション
依頼元が仕様を作れない場合、開発側が工程を分析し、スタートからゴールまでのプロセスを整理して仕様を固めていきます。
工程分析で確認するポイント
- ワークはどの状態で供給されるか
- どのようにワークを取り出すか
- どのように組み付けるか
- 途中で必要な作業は何か
- 精度・サイクルタイムなどの要求値
これらは開発側だけで決めてはいけません。理由は、あとで「イメージと違う」「その供給形態は無理」と言われるリスクがあるためです。
製造業では、部門間の情報伝達の遅れや認識のズレが大きな問題になっており、仕様段階でのコミュニケーション不足は後工程のトラブルにつながりやすいと指摘されています。
そのため、最初の段階こそ依頼元と密に話し、認識を合わせることが最重要です。
仕様決めだけで2か月かかる理由
自動機開発では、仕様決めに約2か月かかることが一般的です。これは、工場の工程が複雑で、作業者の暗黙知や細かい判断条件を正確に言語化する必要があるためです。
製造業では、作業が熟練者の勘や経験に依存しているケースが多く、これを数値化しないと自動化できないという課題があります。
この「暗黙知の言語化」こそが、仕様決めに時間がかかる最大の理由です。
実現性検討フェーズ:ここから時間との戦いが始まる
仕様が固まると、次は「本当に実現できるか」を検証するフェーズに入ります。ここでは実験機(試作機)を作り、仕様通りの動作が可能か確認します。
実験機づくりに時間がかかる理由
- 設計 → 購入品の選定 → 発注 → 組み立ての流れが必要
- 部品の納期が長期化している(世界的な調達難)
- シミュレーションでは限界があり、実機検証が必須
この工程だけで約3か月かかります。仕様決めと合わせると、すでに5か月が経過しています。
製造業全体でも、設備の老朽化や部品調達の遅れが大きな課題になっており、開発スケジュールに影響を与えています。
量産に向けた検討:耐久性・精度の確認
実現性が確認できたら、次は量産に耐えられるかを検討します。ここでは加速試験や耐久試験を行い、数年間の稼働に耐えられるかを確認します。
- ハンドの開閉を何万回も繰り返す
- 衝撃が大きい部分を重点的にテストする
- 長時間稼働時の精度変化を確認する
この工程でさらに2か月。ここまでで約9か月が経過します。
開発は必ず遅れる──だからこそ情報共有が重要
自動機開発は「今までやっていないことを実現する」仕事です。そのため、失敗ややり直しは必ず発生します。計画通りに進むことのほうが珍しいと言ってもいいでしょう。
だからこそ、依頼元とのコミュニケーションが極めて重要です。認識のズレがあると、後半で「どんでん返し」が起き、開発が破綻します。
製造業では、部門間の情報共有不足がプロジェクト遅延の大きな原因になっていると指摘されています。
自動機開発では、常に依頼元と情報を共有し、認識を合わせ続けることが成功の鍵になります。
コミュニケーションを円滑にするために私が実践していること
最後に、私が現場で実際に行っているコミュニケーションの工夫を紹介します。
- 現場に足を運び、作業者の動きを直接見る
- 依頼元と仕様書を一緒に作る(丸投げさせない)
- 工程の写真・動画を撮り、認識を合わせる
- できるだけ早い段階で試作を見せる
- 問題が起きたらすぐ共有し、隠さない
- 依頼元の「本当の目的」を確認する
特に「本当の目的」を確認することは重要です。依頼元が言う「自動化したい」は、実は「作業者の負担を減らしたい」「品質を安定させたい」など、別の目的が隠れていることが多いからです。
目的がズレたまま進めると、完成した自動機が期待と違うものになってしまいます。
まとめ:自動機開発は“技術 × コミュニケーション”で成り立つ
- 仕様が曖昧だと後半で必ず問題が起きる
- 初期段階のコミュニケーションが最重要
- 暗黙知の言語化が自動化の鍵
- 実験機・耐久試験で時間がかかるのは構造的な問題
- 開発は遅れるものなので、情報共有が命綱
自動機開発は、技術力だけでは成功しません。依頼元と開発側が同じ方向を向き、常に情報を共有しながら進めることで、初めて「現場に本当に役立つ自動機」が生まれます。
ゆたんぽBLOG 